理論【眼球内容除去術・義眼台挿入術】

はじめに

眼球内容除去術は眼球破裂、交感性眼炎、眼内炎、有痛性眼球勞などに対して行う。頻繁に行われる手術ではなく、また緊急手術になることが多いため、多方面への対応に追われ、十分な準備が整わないまま手術を開始してしまうことがあると思われる。
この手術が必要な患者を受け入れる可能性があるならば、前もって器具を確認しておき、良い条件下で手術を行えるようにしておきたい。今回は、眼球内容を除去した後、強膜フラップを作成して視神経を切離し、義眼台を挿入する術式について説明する。

なお、ここで紹介する術式は、一般眼科医が緊急手術として行うことを想定して書いたもので、義眼床形成手術として最新のものではないことをお断りしておく。

義眼台挿入の意義

眼球内容除去術は強膜を残してぶどう膜・網膜・硝子体と角膜を除去する術式である。そして硝子体の容積を補填するために、代用物を眼窩組織内に挿入することがある。この挿入するものは義眼台・代用眼球と呼ばれ、眼窩インプラントの一つである。球形、台形、卵形などがある。

正常眼の結膜嚢

正常眼(有眼球)の結膜嚢は、図のように上下に広く形成されている。ここに何かを挿入するとしたら、上下にはある程度の幅のものが入るが、厚みは非常に薄いものでないとならない。

薄い義眼

義眼が薄くて小さいもので済めば、整容的にも長期にわたる装用の観点からも有利である。

薄い義眼を装用できる結膜嚢

小眼球の症例に薄い義眼を装用すると、整容面で良い結果が得られることが多い。

義眼台を挿入した症例ではそれら同様に良い条件の義眼床(義眼を装用するために形成された結膜嚢)が得られるので、義眼の装用に有利である。

厚い義眼

厚い義眼は一時的には非常に有効である。
内部を空洞化して軽量化するなど、様々な工夫がなされている。

厚い義眼を装用しなければならない結膜嚢

眼球内容除去術後で、義眼台を挿入していない症例。結膜嚢は深く形成されている。

上眼瞼の陥凹を補正し、適正に義眼の角膜部を位置させるためには、厚い義眼が必要になる。

すると重みで下瞼縁が下がり、下円蓋部は鈍角に浅くなり、ついには義眼を支えることができなくなる。これを避けるには小さな義眼を装用するしかなく、それでは到底整容面の改善には至らない。

その日のための準備

シリコーン義眼台
義眼台の材料には様々なものが用いられている。これまでガラス、アクリル樹脂、シリコーン、ナイロン、リン酸カルシウム(Bioceramic,BIOPEX)、ヒドロキシアパタイト、ポリエチレン(Medpor)などが用いられてきた。欧米では近年はヒドロキシアパタイトやMedporが好んで用いられてきているが、これらは日本では医療承認がないため保険請求できず、高価であるという大きな問題がある。同様にシリコーンも未承認であり、脱出、劣化など様々な問題があるが、比較的安価であり、何も入れないより良い結果をもたらすと考えられる。
欧米でも値段の問題は切実であり、ヒドロキシアパタイトやMedporが600ドル程度であるのに対し、シリコーン等は数十ドルで販売されている。欧米でも現実にはアクリル樹脂やシリコーンを用いている施設も多い。
義眼台を1つだけ選ぶのであれば、一般眼科医に対しては、シリコーンの18mm径で穴なしのものを勧める。シリコーンは安価で一般的な素材であり、アクリル樹脂より軽くて扱いやすい。組織をしっかり展開すれば多くの症例で18-20mm径の義眼台を入れることができ、さらにシリコーンはナイフで簡単に削ることができるので、いざとなれば表面を平らに削ればよく、大きめのものを用意するのが良いと思われる。
また、シリコーンは生体と癒着しないので脱出の可能性があるが、2次手術で義眼台を包埋しようとする際にはもはや専門医に依頼するべきであろう。穴があると癒着が形成されて作業が増えるだけなので、穴なしがよいと考えられる。
義眼台の生体材料では軟骨、脂肪織、腱膜などが用いられるが、その希望がある場合には、形成外科医の協力を仰ぐべきと思われる。
無影灯 この術式は、顕微鏡を使わずに無影灯下で行うことを勧める。展開した眼球の内部という立体的な構造を把握するのには直視したほうが有利であり、眼内手術のような細かい操作はもはや必要ではない。光量が足りないと感じる場合には、双眼倒像鏡や耳鼻科用の額帯ヘッドライトを用いるか、顕微鏡を同時に準備しておいて場合によって使い分けるとよい。

鋭匙 眼球摘出用鋭匙(10×7.5mm)(イナミ)が推奨される。霰粒腫用よりはるかに大きなスプーンの形をした鋭匙である。他科の器具では、骨膜剥離子や粘膜剥離子で、先端にカーブのついたものが近いと考えられる。 

尖刃メス 11番替え刃メス剪刀 先端が鈍なものバイポーラー 斜視手術にて止血ができる程度のもの5-0Vicryl 糸は吸収糸でも非吸収糸でも構わないのでナイロン糸でも問題ない。扱いは、より糸の方が易しいと思われる。針が短いと強膜フラップを貫通させにくいので、少なくとも5-0以上の大きさを用いる。太いシルク糸は、後に異物嚢胞を形成することがあるので避けたほうがよい。

協力:カジヤマプロテーゼ その日に義眼を作ってくれます。

参考文献:Hydroxyapatite implantation with scleral quadrisection after evisceration.Yang JG, Khwarg SI, Wee WR, Kim DM, Lee JH. Ophthalmic Surg Lasers. 1997 Nov;28(11):915-9.

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