
犬にかまれて受傷。前医で皮膚を縫合された。
手術は受傷翌日に行った。
滑車下神経麻酔と、円蓋部と皮下に局注し、開創。6-0シルク糸でtractionをかける。
涙小管の断端を同定し、クロフォードチューブを切ったものを涙点から押し込んでいくと、15cmほど挿入できた。涙小管を4針縫合し、瞼縁も縫合。上涙点から挿入が困難だったため、チューブを半分の幅に切って皮膚に固定し終了した。瞼縁の縫合糸は長く切断して、皮膚に3Mステリで固定。断端が瞼裂に入らないようにする。

上下涙小管断裂
下は涙点より10mm、上は涙点より7mmの部位で断裂。
前涙嚢稜に沿って20mm皮膚切開し、まず内嘴靭帯を、さらには前涙嚢稜を露出する。涙嚢部のseptumをわけて同じ層の切開を繰り返すと涙嚢に当たり、血性のmucusが出てきた。さらに切開を広げ、粘膜にtractionをかけて展開。
総涙小管が涙嚢に開口している部分がある。曲ブジーを挿入し、断裂部より涙点にむけて別のブジーを挿入。中に糸を通した0.7mm径のシリコーンチューブをブジーの先に通して引き抜く。
それを曲ブジーに通し、涙嚢内に引き抜く。これで下の涙小管に通ったわけである。同様に総涙点から上の涙小管にむけてブジーを通す。断裂部より別の曲ブジーを涙点に向かって通し、引き抜き、さらに涙嚢に向かって引き抜く。これによって上下にチューブが留置され、ループが形成された。
つり針鉤をかけなおして確認。上下ともチューブが留置されている。下涙小管を2針、周囲の靭帯を2針、上涙小管を4針縫合、さらに周囲組織を縫合すると、外傷の創はきれいに寄ることになる。チューブを揃え、スリット状に切開をいれ、中に通しておいた糸を取り出す。これを縫合することによって、チューブは固定される。残りのチューブは鼻涙管に挿入。涙嚢の前壁を縫合する。上下涙点は位置が揃い、チューブが留置されている。