眼形成手術手技 動画説明【老人性眼瞼下垂(牽引筋腱膜性)】

挙筋腱膜縫着術理論

挙筋腱膜縫着術は、上眼瞼挙筋が瞼板からはずれている病態に対し、挙筋腱膜を縫着する手術治療である。様々な方法があるが、ここでは挙筋の短縮やミュラー筋の前転は行わずに挙筋腱膜の縫着のみを行う方法を紹介する。

カーソルを画像に乗せると、眼瞼挙筋を縫着したときの様子が示されます。

参考文献
Mike Callahan: Beard’s Ptosis, 4th edition. Alabama, Ophthalmic Leasing Co, 1990 p186-197
Anderson RL, Dixon RS. : Aponeurotic ptosis surgery. Arch Ophthalmol. 1979 Jun;97(6):1123-8.

white lineとは

眼窩隔膜が挙筋腱膜と接続する部分のことで、白くしっかりとした組織なのでこのように呼ぶことがある。特にBeard’s Ptosis, 4th edition p188にこの言葉が用いられている。

多くの文献ではこれは「挙筋と眼窩隔膜との接合部」や「腱膜の巻きあがった端」」などと表現されるのみである。しかし挙筋腱膜を露出する際に眼窩隔膜をwhite line直上で切開するなど、術中の指標として繰り返し出てくる重要な組織であるので、今回はこの言葉を使わせていただいた。

さらにそのすぐ上に低位横走靭帯(lower-positioned transverse ligament)が走行している説や、特に横走靭帯との関連については述べていない文献など、挙筋遠位端の解剖に関しては様々な意見が交わされている。手術のための臨床解剖と組織学的裏付けは一致するべきであるが、混沌としているところもあり、本章では前者を優先して執筆していることをご理解いただきたい。

腱膜(aponeurosis)とは

骨格筋の末端は通常強い結合織からなる腱(tendon)か腱膜(aponeurosis)をなす。とは組織が1本に収束して断面が丸くなっているものを言い、主に骨膜に付着する。腱膜腱組織が幅広で薄くなったものを言い、平行ないくつかの層を形成して広範に他組織に付着したり他筋線維に融合したりする。

「aponeurosis」という言葉を形成するapo-はfromの意を表し、neuronは初期の解剖学で神経と腱の両方の意味を持っており、ここでは腱を表す。aponeurosisは腱からでる組織という元来の意味の通り、腱と同様の頑丈な組織で形成され、特有の表面の光沢がある。

眼瞼挙筋の末端は腱膜(aponeurosis)であり、眼窩脂肪に面した部分は光沢を持ち、層の一部は瞼板に付着し、一部は眼輪筋線維を貫き皮膚に付着している。

尚、筋膜(fascia)というのは筋肉や臓器を覆って他組織との境界を作る強靭な結合織のことであるが、肉眼の所見が腱や腱膜と似ているのでそれらの総称として用いることもある。 (Gray’s anatomyより)

手術

デザイン
瞳孔を尊重し、角膜径より左右2mmずつ大きめに切開線をデザインする。

皮切・眼輪筋処理

眼窩隔膜の切開
眼窩隔膜の一部を把持して上方に牽引し、索状になった部分に切開を入れる。はじめは瞼縁から7mm程度の部分から切開を入れ、瞼板を露出する。この切開を上方から始めると、瞼板側に組織が残る結果となり、後に挙筋腱膜を縫合するときに邪魔になって結局切除することになる。
挙筋腱膜は断裂して上方に偏位しているはずであり、ミュラー筋は結膜と容易には分離できない組織である。これらを傷害することは稀であると考えて、心配せずに瞼板を露出していただきたい。操作を鈍的に行うと、眼窩脂肪が露出しやすくなるので注意する。

挙筋腱膜の同定
眼窩隔膜を切開して上方に翻転させると、white lineが結合織の向こうに確認できる。
開瞼を指示すると、white lineは奥に引き込まれ、瞼板との間の組織が薄く引きのばされ、場合によっては角膜が透見される。
確実に挙筋腱膜を同定するには、牽引試験が必要になる。まず鑷子を立てて白く横走する組織(white line)をしっかり把持し、下方に引いて固定する。この状態で開瞼を指示すると、布のひもを引かれたような、遊びのない牽引を感じるはずである。把持すべき場所がもう少し上かもしれないと迷った場合には、その場所を把持しなおして開瞼を指示する。腱膜からはずれて眼窩脂肪周囲の組織を把持した場合にはこの牽引をほとんど感じないはずである。

挙筋腱膜の露出
この過程が、慣れるまでに最も熟練を要する部分である。左手の鑷子で挙筋腱膜を含む組織(white line)を下方に固定し、腱膜と眼窩脂肪の間の眼窩隔膜を鋭的に切開する。上方すぎては脂肪織が露出してしまう。下方すぎては折りたたまれた腱膜を伸ばすことができなくなる。
露出した挙筋腱膜の表面は、眼窩脂肪とは非常に「疎」な関係にあり、一部を露出したならそれを頼りに広い範囲を簡単に展開できるはずである。鑷子で十分に牽引を加え、小さな切開にて組織が展開されるようにする必要がある。
左手の鑷子で十分に挙筋腱膜を掴みきれていない場合、誤って挙筋腱膜と筋腹の間を剥離してしまうことがある。この間も比較的「疎」であるが、挙筋腱膜と眼窩脂肪の間の「疎」の程度とは比較にならない。

挙筋腱膜が露出したなら、その切開を左右に広げる。white lineは反転して折りたたまれている腱膜であるので、それを伸ばす。挙筋のうち縫合に適した頑丈な組織層は、これによって最大に展開される。 眼窩脂肪の表面の結合織が破綻すると脂肪が露出する。術野が展開しにくくなるので脂肪の露出は避けたいが、もし生じてしまっても治療効果に影響はない。

縫着
腱膜・瞼板・腱膜の順に通糸し結紮する。まず瞳孔にあたる部分からはじめ、次に左右に通糸し、計3針とする。糸は6-0プロリン糸を用いる。
挙筋腱膜に通糸する際には、白くしっかりした部分を選ぶ。刺し応えのある感触があるはずである。 瞼板には、瞼板そのものにしっかり通糸する。半層に通糸するように心がけ、決して瞼結膜側に貫かないようにする。瞼板の前に余分な組織があると、縫合で組織を接着する力が弱くなりがちになるため、瞼板は十分に露出しておく。通糸する位置は、瞼板上縁より3分の1から上縁の間で、座位で開瞼して定量する。術後の戻りはほとんどないので、患者の気に入る部分を選択する。 。

BEFORE & AFTER

BEFORE

AFTER

術4日後
術1週間後
眉毛が下がり、女性らしい顔になった。
コンタクトレンズ下垂
術翌日。この患者は指示通りに冷やしたため、腫れを抑えられた。
「コンタクトレンズをはずす」の図

このように開瞼したままで瞼縁を引っ張るため、挙筋と瞼板の接合部に無理がかかって断裂するのだと考えられる。術後には違う方法での取り外しを指導している。
左右それぞれの人差し指で上下瞼の睫毛の生えぎわを押さえ、下瞼の人差し指を固定させ、上瞼の人差し指でレンズをはじきだすようにしてはずす方法(日本コンタクトレンズ「ハードコンタクトレンズのつけ方・はずし方」)、スポイトではずす方法がある。

BEFORE

AFTER

1週間後
4日後
2週間後 高い重瞼線を希望される場合、十分な話し合いが必要となる。

その人の希望する重瞼線がどこであるのかよく話し合う

~昔からぱっちりしてみたかった
~左右差があるが、若い頃と同じ感じにしてほしい
~近所の人に「あの人整形したのよ」といわれない程度にしてほしい

手術の概要

  • 眼瞼挙筋がはずれていることが原因となるため、元通り縫い付ける手術を行う。
  • 二重にする予定部分(2cm程度)を程度皮膚切開する。
  • 美容的な側面も当然含まれるので、術前に十分な相談時間をもうける。
  • 眼瞼を持ちあげる以外の手技(重瞼形成など)を加えた場合でも、手術費用は保険適用となる。

眼瞼挙筋がはずれているため、眼瞼が下がっている。
無理に眼を開けようとするためさらに眉毛が上がり、おでこにしわが寄り、二重が幅広くなってしまう。 
眼瞼挙筋縫着術後である。
余計な皮膚を取る手術も一緒に施行した。
自然に眉毛も下がってきたように思われる。

質疑応答

鏡は術中に見せるのでしょうか

希望を聞くと、女性は8割が、男性は3割が術中に鏡を見ることを希望されます。これにより、術後腫れたりした場合も心配せずに経過をみることができる。

ミュラー筋はいじらないのでしょうか

はい。触れません。病巣は腱膜と瞼板の関係ですから、悪いところだけを治すのは理にかなっていると思います。

糸は通常バイクリルが遣われていましたが

腱と瞼板というような容易に癒着しないもの同士は、丸針で非吸収糸を使うようにしています。さらに重力に抵抗するのですから責任は重大です。バイクリルでは角針なので、うまくつかなかった場合は、術後1-3ヶ月で再発してしまいます。

眼瞼下垂になったら

手術を受けた患者は、揃って「もっと早くやっておけばよかった」とコメントする。顔つきが明るくなって元気がでるようである。 

老人は4-5mmの重瞼線を作ったほうがいい
~どうせ皮膚が垂れ下がり、表面には作った線はでない
~睫毛に皮膚がかぶさると重いので満足しない 

鏡を見たいという患者には、術中であれ思う存分に観察してもらうようにしている。

野田実香 Official site
error:Content is protected !!